服飾雑貨の内野(東京・中央)が手がける自社ブランド「UCHINO(ウチノ)」が存在感を高めている。高級タオルの製造で培った技術を衣料品に転用し、着心地の良いパジャマやバスローブなど「くつろぎ着」を開発。近年はシャツやワンピースなど普段着に商材を広げ、2019年11月には旗艦店を開いた。質の高い生地を打ち出し、国内外の顧客取り込みを目指す。
■高級タオル技術をアパレルに応用
「とにかく触り心地がいいですね」。渋谷スクランブルスクエア(東京・渋谷)内にあるUCHINOの店舗を訪れた40代女性はこう話す。売り場に並ぶ商品の多くは、内野が手がけるアパレル商品。女性は人気シリーズ「マシュマロガーゼ」を手に取り、素材の軽量感と肌触りの良さに驚いたという。
内野はタオルメーカーとして1937年に創業し、長く百貨店向けのタオル販売で成長してきた。バブル経済真っ盛りの頃は「作っただけ、全部売れた」(内野信行社長)。ただその後は中元や歳暮といった贈り物需要が徐々に縮小する。若者を中心とした百貨店離れも進む中、タオル専業では経営が立ちゆかなくなるとの懸念が強まった。
そこで、停滞感を打破するべく、2014年ごろからアパレル事業への進出を決断。自社の技術をアパレルに応用することで、これまでにない衣料品を開発できると判断した。
販売にあたり、まず既存の百貨店ルートを活用。タオルと併売する形で商品を展開していったが、当初は商品戦略の転換に社内から反対意見も上がった。単価が数千円程度のタオルに対して、平均1万5千円と高額な衣料品は、既存の顧客が離れるリスクがあると思われたためだ。
■1人で40着以上購入した訪日客も
だが「売ってみると、店の売上高が軒並み1~2割増加した」(内野社長)。シンプルなデザインながら、タオルをまとったような「くつろぎ着」が顧客の支持を集めたようだ。現在は百貨店内にある内野の店舗ではすべて衣料品を扱い、店によっては売り上げの半分以上がアパレル商材が占めるという。商業施設への出店も進めており、知名度は徐々に高まりつつある。
今後は同社製品を扱う海外の約400店舗の取扱店でもUCHINOの商品を販売を促す方針だ。訪日外国人(インバウンド)客の引き合いも強く、東京・六本木の店舗では「ギリシャからの旅行客が、1人で40着以上買っていった」(内野社長)ケースもあるという。
恒常的な衣料品の大量廃棄が社会問題化するほか、トレンドを無理に追わない風潮が強まるなか、ファッション業界は低迷のまっただ中にいる。それでも、品質が高く、長く使える商品が欲しいと考える消費者は逆に増えているとみられる。第2の創業期ともいえる内野がこうした需要を取り込めれば、一段の成長につながりそうだ。
(堺峻平)
▼もともとタオルメーカーだった内野が2014年に一新したライフスタイルブランド。主力シリーズの「マシュマロガーゼ」は通気性と保温力を両立した着心地の良さが魅力だ。平均価格帯は1万5千円ほどで、全国の百貨店などで取り扱う。国内外のブランドへの生地提供も手掛ける。
[日経MJ 2020年1月24日付]
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